トキワ荘の日々を細かく描写した当事者ならではの現場報告
―――水野英子「トキワ荘日記」を読む（2010.1.31）
東京に行ったときに、神田古書センターのマンガ専門店で見つけた。
古書ではなく、自費出版のものが古書店ルートで流通しているものらしい。
数ページのマンガやカットも入るが、基本は文章だけで100ページ弱の小冊子である。
あとがきによると、自伝の中のトキワ荘の章だけを抜粋したもので、
トキワ荘について誤った情報が流布されているきらいがあるので、
本当のことを伝えるよう心がけたそうだ。
そのような視点で書かれてているためか、トキワ荘メモというページがあって、
当時「あったもの」「なかったもの」のリストアップがされていたりする。
ちり紙は四角く切った再生紙、電灯はすべて白熱電球、ざるは金網か竹かご、
もっといろいろ書いてあるが、その細かさがやはり「描く人」の目線なのだろう。
一番驚いたのは、赤塚不二夫が細身、紅顔の美青年として描かれていたことだ。(1)
要するに、みんな若かったということか。
そういうまとめ方が適切ではなさそうなのだけれど。
(1) この文章には、次のようなコメントがついた。
「赤塚先生が美青年だったのは事実です。 藤子不二雄A先生もよくそうおっしゃいます。
写真見たことありますが、可愛らしい男の子って感じでした。
当時の男性の中では余計可愛く見えたかと思います。かなりモテたらしいです。」
くわしい事情は分からないが、マンガ界の内部をよく知る方からのコメントのようなので、
本当に「美青年」でよくモテたのだろう。
今回、コメントをくれた方を調べてみたところ、マンガ家さんで、
しかも、このコメントの1年後に亡くなられていたらしい。
出会った瞬間に別れてしまったような、不思議な経験をしてしまった。
水野英子の部屋(公式サイト)
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