| やしきたかじんを追悼する遥洋子の言葉を記録する試み・・・ 関西テレビ「たかじん胸いっぱい」から(2014.１.11) 上方演芸の過去から現在までを重層的に描く労作・・・ワッハ上方編「上方演芸大全」を読む(2013.12.14) やしきたかじんを追悼する遥洋子の言葉を記録する試み―― 関西テレビ「たかじん胸いっぱい」から(2014.１.11)皆さんにはたいへん申し訳ないんですけど、私は闘病中の去年の秋のお誕生日に、私だけ招かれました。 たかじんさんと奥さんのご判断で呼んでいただいたのは、 私はたかじんさんと飲む機会もなかったし、しゃべる機会もなかったですので、 その配慮だと私は思ってるんですけど。 それで、奥様と出会って、大変安心しました。 この人なら、たかじんさんをお任せして大丈夫だと安心をして、 どんなお料理作っているのかも見せてもらいました、小姑のように。 すごいお料理を、たかじんさんのために作り続けている女性でした。 ですから、私は、 たかじんさんは、もっと早くに「ちょ〜飲みに行ってくるわ」（1）と言っててもおかしくなかった生命が、 あの女性によって２年間生かしてもらえたのだと、今は理解できます。 それから、照れ屋のたかじんさんならではで、 その女性を通して（奥さんを通して）、私に連絡が来ました。 「もっと、しゃべれ。おまえは、もっとしゃべっていい。」 クリスマスには、クリスマスプレゼントももらいました。 ちょっと皆さんに申し訳ないんですけど、えこひいきしてもらいました。 そして、ある時、朝、天気のいい時に、 「茶ぁ、飲みたいと、たかじんさんが言ってる」 と奥さんからメールが来ましたので、喜んで行きました。 結婚されたのを聞いてたので、 花束持って、結婚祝い持って、「おめでとうっ!!」って行きました。 「ありがとうっ!!」って奥さんが迎えてくれました。 そして、ものすごい良い天気の朝、ものすごい明るい音楽を部屋に流して、 初めてたかじんさんの新居にうかがって、 「いやあ、こういうところに住んでたのねえ」って言って、 「おめでと う」って言って、 「洋子さん、たかじんさんが＜ケーキを洋子に出せ＞って言ってるから、紅茶は何が良い？」って言って、 素敵な音楽と素敵な空間の中で、「それで、たかじんさんは？」って聞いたら、 「その、会う前に、たかじんさんがこれを伝えてくれって言うのがあるから伝えるね。」 って言って笑顔で伝えてくれました。 「１月３日に亡くなった。」と。 結婚の花束を渡した時に、告げられました。 「なんで？」と聞きましたら、たかじんさんのご遺志で、 「洋子だけは、一人で家でニュースで俺の死を聞かせるな。 洋子だけは家に呼んで他のメディアから聞かせるな。」 というたかじんさんの約束を守って、 奥様がずっとたかじんさんになりかわって、私にメールをし続けてくれてました。 たかじんさんは、自分が亡くなる直前まで、亡くなった後の私の気持ちまで、 奥さんを通じてフォローをし続けてくれました。 帰りに、たかじんさんからと言って、なんかもらいました。 開けたら、お小遣いが入ってました。 亡くなった後まで、お小遣いをもらいました。 彼が正月を避けて公表されたのも、 正月のめでたい気分を、自分のことで悲しませたくない思いがあったからだ、 と。 だから、その報告も正月の後にするように、 という、たかじんさんが、ファンの皆様とか、他のスタッフとか、共演者に対しての、 たかじんさんの配慮をすべて、奥様が代行されました。 私は自分を、その輪に入れなかった私のことを、ここまで配慮してくださっていた、 亡くなった後にまでお小遣いをくれる、一人で聞かないで済ませてくれた、 そのやさしさに、心から感謝を言いたいと思います。 彼らしいなあ、と思いました。 それくらい彼には、私は不憫に映ったんだと思います。 でも、お伝えしたいことがあるのは、みなさん、安心してください。 本当に、奥様に見せていただきましたが、 「さようなら」したときの棺の中のたかじんさんは、 1000回記念の衣装の真っ赤なのをお召しで、 お顔は大変しあわせそうで、穏やかなお顔でした。 遥洋子は、2009年4月から「たかじん胸いっぱい」にレギュラーゲストとして出演している。 ちょうど入れ替わりで降板した桂ざこばに代わる形で、 （他のゲストでは止めることのできない）たかじんの暴走トークをたしなめながら、混ぜ返す役回りだった。 たかじん休養後はたかじんの居たＭＣ席にはいろんな人が交代で座ったが、その役割はあくまで進行役であり、 トークテーマを推進する役割は、遥洋子がやしきたかじんになりかわったかのように、 時に暴走することも含めて引き受けていた。 たかじんが遥洋子に「もっとしゃべっていい」といったのは、そのあたりのことを指しているのだろう。 この起こした文章だけを読めば、遥洋子とやしきたかじんが特別な関係にあったようにも読める。 私生活での本当のところは知る由もないが、 やしきたかじんはテレビタレント・遥洋子のトーク力を高く評価し、 自分の冠番組の一つである「たかじん胸いっぱい」のなりゆきを任せるだけの 「特別な信頼」を寄せていたことは間違いない。 伝え聞くところによれば、遥洋子は、やしきたかじんと同様に、 そのトークの過激さとはうらはらに、繊細で人見知りで孤高な努力家であるらしい。 ただ、遥洋子は酒を飲まないことから、追悼の言葉にもあったように、 たかじんとは「飲む機会もなかったし、しゃべる機会もなかった」ようだ。 たかじんの方も、遥洋子の性格や、 (酒の力を借りながら)本音の話をする機会がなかったこともよく理解していたからこそ、 「えこひいき」なまでに最大限の配慮と感謝をしたということなのだろう。 そして、バラエティ番組らしからぬ遥洋子の追悼の言葉は、ハイヒールリンゴとの次の対話でおわる。 リンゴ「洋子ちゃん、一つ質問していいですか。「お小遣い」はおいくらやったんですか。」 遥洋子「ないしょ」 「そこを聞くんかい」という他のゲストの総ツッコミを受けることで、 過剰に緊張してしまった番組の空気を、うまく緩和したハイヒール・リンゴの力も見事だった。 (1) やしきたかじんの最後の言葉として伝えられている。 ＊ 「たかじん胸いっぱい」は、やしきたかじんが休養した2012年２月以降もたかじん不在のまま継続し、 さらに2014年１月３日の死去後も1年以上続いたが、2015年4月に「胸いっぱいサミット！」と改題した。 Haruka
Yoko Network(遥洋子公式サイト)
Wikipedia 内「胸いっぱいサミット！」ページ やしきたかじんを追悼する上沼恵美子の言葉を記録する試み―― 読売テレビ「上沼・高田のクギズケ！」から(2014.１.12)「思い出とか」って言われても、私もこの5，6年はお会いしてないんですけどね。 私は、ものすごいショックでした。 というのは、大阪を出ないで、大阪で一応、冠の番組を持たせていただいてるというと、 男女の差はありますけど、たかじんさんと私。 彼も私を意識してたと思うし、私も彼の番組が視聴率良いとちょっとムカッとしたし、 なんていうの、良いライバル。 全然、売れてないときに、たかじんさんとよく飲みに行ったんです。 たかじんさんが売れてないときですよ。 私はお姉ちゃんと漫才やってて売れて、結婚して、その後、何回か飲みに行った。 その時に飲みに行って酔っ払うと、よくテレビのことを言ってましたわ。酔うと、テレビのはなし。 「なんで俺が売れへんねん。テレビ出られへんねん。テレビ局が間違うてる」いうて、「わあーっ」て、 みっともない酒やなあと思いながら、私は横で。 でもね。 その後、「グアーッ」といきましたね。 でも、「おしゃべりで」という形ですから、 歌は、歌唱力はあるんだけどもヒットは２、３曲、もっとあるのかな。 でも、やっぱり、おしゃべりがすごいじゃない。迫力っていうのかな。すごい。 でもね。 売れてないときから知ってる、というのも失礼な言い方なんですけど。 言わせていただくとね。 ものすごい潔癖症なのね。気ぃ弱くてね。気ぃ、小っちゃあーいのよ。 一回、遊びに家に行ったこともあるんですけど、まあ、冷蔵庫あけてビックリした。ピカピカッ。 驚いたのは、明日、食べるシャケとかね、タラコとかが、ちゃんとこう、ペラッと並んでるの。 ホントに、「うぉお美しい」というような、見本みたいな。 リビングもきれいにしてるし。 その時に、私は別に故意でやったわけじゃないんだけど、 ワインがお好きなので赤ワイン出してくれて、 白いムートンの絨毯の上に、手がパッとひっかかって、ダァーッとなって。 そしたら、たかじんに怒られるなと思ってたら、 私が黄色のスーツを着てて、「大丈夫やったか、大丈夫やったか」って拭いてくれて、 すごい几帳面な。 気の小さいと言うのは失礼なんですけど、 彼は、こういう指し棒を持って「ガーワーヤー」とか、兄貴であったりとか、 無頼を背負ったり、親分肌の豪快な方なんですけど、 「あれは作っていったな」と私は思ってるんですよ。 で、ウケるじゃないですか。 テレビ局・番組側も「たかじんさん、またあのガラ悪くやってください」みたいな要求する。 また、それがウケてくことが自分の快感となり、 私の分析ですよ、 いつのまにか、素のたかじんさんも、ああなったんだと思ってるんですよ。 私が知ってるお若い時と全然違うもん。 だから、ほんとにね。思うんです。 いろんなこと語ってらっしゃいますわ、特に関西の番組はね。 で、私に「何か言え」ということなんだろうけど、言うことないんですけどね。 まあ、よぼよぼになって、 「この指し棒をパーンて折れたりするくらい頑張るたかじんさん」て、いたわけですよ。 それが、よぼよぼになって、迫力なくなって、それで天国に召されるより、 「いい時期だな」という感じは、ずっとしてますよね。 もう、現役のまんま逝っちゃったから。 ただねえ、たかじんさん。 もうちょっと、歌ヒットしたかったですねえ。 全国的に、ドーンと行って。 「東京、きらいだ」なんだなんておっしゃってたけど、「紅白」出たかったでしょう。 私、そう思います。 関西にこだわって、大阪大好きで、というのも本当かしらんけど、 本音の本音の本音は、彼はシンガーですから。 私も関西ローカルタレントなんですけれども、彼もそうでした。 彼は来世は歌で紅白で、もしか私が司会できてなんていう、 そんな来世が実現できたらええなって思います。 上沼恵美子が司会をする「クギズケ！」は、 この追悼コメントの時間をもうけるために、10分ほど長い編成で放送された。 そのため、いくつかの局はネットしなかったようだ。 さらに、雑談的な話題は続く。 歌は、ものすごい上手いですよ。 私のために何曲も京都で歌ってくれたことあります。 ひとり、上沼。客。 たかじんさん、ここ。目の前。 京都だったんで、私、早く帰りたかったんでね。 だって、早よ帰らんと、一応、人妻やったから。 で、もう一曲行くわあ言うて、酔っ払って歌ってくれたんだけど、十何曲。 もう、ほんと、いやでしたあ。 だから、要は、彼は歌手ですから。 絶対に、「東京は嫌い」とか「東京はかなわん」とか「何がＮＨＫだ」と言ってるけれど、 絶対に出たかったって。 テレビを一番知ってる人なんちがいますか。 テレビのあり方とか、ものすごい熱心な、神経質な人でしたね。 歌えるし、しゃべれるし、人気もあるし、もう、すごい方ですよ。 元気いっぱいじゃないといかんから、しんどかったと思うわよ、病気したら。 私、一回だけ、たかじんさんと、毎日放送なんだけど、 お正月番組で大阪発の全国ネットで司会やったことあるんです。 きっと、今度「追悼」で、「毎日」やるんちゃうかなと思うんですけど、 それが、３０％近く行ってるんですよ、全国的に。 大阪だけじゃなくて、すごい視聴率とって。 その夜に私がたかじんに電話して、正月の元旦放送かなんかだったんですけど、 年末に「今日の収録、すごくよかったから、いっしょに飲まない？」って言って、 私が京都に行ったんですよ。 結果、10曲歌った夜です。 ゲストに来てもらったりとか、あの人の番組にチョロっと出たりとかはありましたけど、 二人でこうやってＭＣして、ものすごい視聴率とったというのが１回だけありましたね。 ものすごく気を遣う方でしたね。私がしゃべろうとした時に、ぱっと譲ってくれて。 なんて言うんだろう。息がわかるっていうのかな。 「あらー、初めていっしょに司会するのに、なんて息がわかってる人なんやろ」って思いました。 流暢に話しているような上沼恵美子だが、 文字に起こすと、オノマトペも多く、意外なほど行ったり来たりしながらの話になっている。 自分で緩急をつけ、自分でボケて、という芸人としてトークの技がうかがわれる。 上沼恵美子の場合、番組を背負うＭＣとして、 追悼の言葉を語りつつも、現場の空気を見ながら緊張が高まりすぎたと思うと笑いを入れてみたり、 わざと悪口めいた言葉を挟んだり、当意即妙の軌道修正をしている。 一方、流れるように語った遥洋子は、スタジオに入った時点で完全にスピーチとして仕上げて来ていた。 それぞれに、それぞれらしい追悼の言葉である。 Wikipedia 内「上沼恵美子」ページ Wikipedia 内「上沼・高田のクギズケ！」ページ |